未来のお墓研究所
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お墓参りで線香をあげるのはなぜ?
正しい手順や消し方なども解説
線香の正しい取り扱い方や手向ける本数を事前に確認することで、迷うことなくスムーズにお墓参りができます。
そこで今回は、お墓参りに欠かせない線香に焦点を当て、線香をあげる理由や正しい手順などについてご紹介します。
目次
1. お墓参りで線香をあげる理由とは
お墓参りに線香をあげる理由は諸説ありますが、火葬が発展していなかった当時は線香によって死臭を消す効果があったとされています。
現代では火葬することが9割ですが、線香をお墓参りに手向ける習慣は残っているものです。諸説ありますが、お墓参りに線香をあげる理由は以下の説が考えられます。
・仏教的な意味
・浄化の役割
・お供え物
・故人とのつながりを感じる
仏教的な意味
宗派によって異なる部分もありますが、線香は一般的に仏教におけるお供え物の五供(ごく・ごくう)のひとつです。
五供には「香」「花」「灯明」「水(浄水)」「飲食」の5つのものがありますが、線香は「香」の象徴。後述しますが、香りは仏教上、身を清らかにするとされています。
浄化の役割
前述の通り、線香はあげた場所や人を清めてくれる働きがあると言われています。あの世で成仏された故人やご先祖様へ向き合う人たちの「邪気を払う」役割もあるのだとか。
線香の香りでリラックスするという方もいるでしょう。線香の香りは人の心を落ち着けてくれる作用もあります。
お供え物
線香は浄化の役割だけでなく、亡くなった方のための食事にも例えられます。古代インドの仏教経典には以下のように記されているようです。
「香りは死者の食べ物で、生前善い行いをしてきた死者は良い香りを食べられ、悪い行いをした死者は悪い匂いしか食べられない」
もちろん諸説ありますが、亡くなった方が香りを食べるという考え方は興味深いと言えます。
故人とのつながり
線香をあげることにより故人とのつながりを保つとも言われており、覚えておくだけでもお墓参りが一層感慨深いものになるでしょう。
お墓へ線香をあげることは玄関で呼び鈴を鳴らすことと同じと言われており、線香の煙を通じて仏様となった故人と繋がるとされています。
また、故人を思う気持ちを線香の香りと煙に乗せてあの世に伝えられるとも言われており、繋がりを大切にするための物であることが分かります。
2. お墓参りで線香をあげる際の正しい手順
お墓参りで線香をあげる手順に細かな決まりはないと言えますが、主に以下の手順で線香をあげることがおすすめです。
1. お墓および周辺を掃除する
2. お供え物を供える
3. 線香をあげる
詳しく見てみましょう。
お墓および周辺の掃除
線香をあげる前にお墓や周辺を念入りに掃除することを忘れてはいけません。お墓の掃除は自身の身を清めるだけでなく、ご先祖様に来たことを知らせる役目があると言われています。
墓石の掃除だけでなく、お墓周辺の雑草抜きや落ち葉の掃除も念入りに行い、ご先祖様をお迎えする準備を整えましょう。
お供え物を供える
お墓や周辺の清掃が済んだら、お供え物を供えます。お墓参りの場合は、お水と供花を持参・お供えすることが一般的ですが、故人の好きだったものを供えても良いでしょう。
霊園など集団墓地や納骨堂などの場合は、管理者の指示に従ってお供え物を準備すると安心です。
地域によってはお水ではなくお茶を供えるなど地域性も関係するため、あらかじめ地域の人や菩提寺に確認することをオススメします。
線香をあげる
お供え物を供えた後に、線香をあげるのが一般的な手順です。具体的には以下の流れで線香をあげます。
1. ロウソクに火を灯す
2. ロウソクからお線香に火を移す(墓石の両脇に燭台がある場合は、必ず右側のロウソクから火を移す)
3. 火を移したお線香を、亡くなった方に近い人から順番に分ける
4. 亡くなった方に近い人から順番に線香を横にして置く
天候などによってはロウソクに火を点すことが困難かもしれませんが、なるべくロウソクから線香に火を移すよう心がけましょう。
3. お墓参りの際にあると便利なもの
お墓参り時の線香をあげるまでの流れをご紹介しましたが、線香以外にも必要な道具が登場していることが分かったのではないでしょうか。
この項目では、お墓参りの際にあると便利なものをご紹介します。以下の物を準備しておくと、お墓参りがスムーズにできるため、おすすめです。
・ライターやマッチなどの火をおこす道具
・掃除道具
・供花やお供え物
・湯呑と急須
・数珠
詳しく見てみましょう。
ライターやマッチなどの火を起こす道具
線香を焚く際は、原則ロウソクから火をつけます。しかし、天候によってはライターやマッチなどの火をおこす道具から直接、線香に火を灯すほうがいい場合もあるでしょう。
最近では、お線香専用の着火器が登場していますので、活用しても良いかもしれません。ただし、一般的には着火器から線香に直接火を点すことはNGとされている場合があります。
不安な場合や心配が払拭できない場合などは、お墓参りに同行した親戚や菩提寺の住職などに確認すると安心です。
掃除道具
お墓を掃除するための道具も欠かせません。
・たわし
・ほうき
・ちり取り
・バケツ
準備することで掃除が楽になるでしょう。寺院の霊園などでは基本的な掃除道具を貸し出してくれている場合もあるため、確認すると荷物を減らせます。
また、納骨堂など一般的な霊園でするような掃除が不要な場所もありますので、確認することをオススメします。
供花やお供え物
供花や亡くなった方が生前好きだったものをお供え物として準備しても良いでしょう。仏壇とは異なり、お墓参りの際は衛生上の観点や野生動物による荒らし防止の観点から、お供え物を持ち帰ることがある場合も考慮しなければなりません。
特に霊園など管理者が存在する場合は、ルールに従って供花やお供え物の準備をしたほうが無難です。
湯呑と急須
地方によっては湯呑と急須を持参する場合があることを覚えておくと役立ちます。お水は、自宅から持参する場合もあれば霊園などの給水所を利用する場合もあるなど、地域性や霊園のルールなどが関係するケースが多いと言えます。
急須にはお茶の葉を入れる場合や、水道水を入れるなど、地域性があるため確認すると安心です。
お墓に水鉢がある場合、水鉢へ水を満たせば亡くなった方に対してお水を供えたことになることから、湯呑は持参しなくても差し支えありません。
また、お茶を直接水鉢に入れると墓石が傷む場合があるため、お茶をお供えする地域にお住まいの際は必ず湯呑を持参し、湯呑にお茶を入れましょう。
数珠
お墓参りの際、最後に手を合わせるときに数珠を用いる場合があります。ご家庭によっては不要な場合もありますが、持参しておくと万が一の場合も安心です。
4. お墓参りで線香をあげる際のマナー
線香をあげる際は、火の取り扱いに気を付ける以外にも以下のマナーがあります。
・宗派によってあげる線香の本数が異なる場合を考慮する
・線香は途中で消さない
・いきなり線香をあげない
仏教宗派における細やかな部分に違いがあることだけでなく、亡くなった方やご先祖様を大切にするという観点がマナーとして浸透していると言っても良いでしょう。詳しくご紹介します。
宗派や地域で定められた本数をなるべく守る
線香は墓前に対して1~3本あげることが一般的ですが、お墓の宗派や地域・ご家庭によってお線香の作法は異なると言っても良いでしょう。
お墓参り前に、故人のお墓の宗派を親戚など関係者や菩提寺に本数について尋ねておくと安心です。
以下に宗派ごとの線香の本数目安を示しましたので、すでに宗派が分かっている場合は参考にしてみてください。
宗派 | お線香の本数 |
---|---|
浄土宗 | 本数に決まりはない |
浄土真宗 | 本数に決まりはない |
天台宗 | 本数に決まりはない |
曹洞宗 | 基本は1本 |
日蓮宗 | 1本もしくは3本 |
臨済宗 | 1本もしくは3本 |
真言宗 | 原則3本 |
また、亡くなった方が無宗教や宗派がわからない場合は、線香を束で置くこともあるでしょう。
線香を束で供える場合は、火事を防止するために線香を束ねる紙を外してからお供えします。
途中で消さない
線香は途中で消さず、最後まで燃え尽きてから消すことがマナーです。天候が悪い場合はお墓参りの間だけ線香をたいても差し支えないかもしれませんが、天候の理由を除いては故意に消さないようにしましょう。
いきなり線香をあげない
お墓に到着していきなり線香をあげることもNGです。お墓を掃除して、清める作業は仏教において重要とされています。
早く線香をあげて亡くなった方に思いを馳せたい気持ちもあるかもしれませんが、まずは掃除してお墓をきれいにしてからあげましょう。
5. 線香の火を消す際に息を吹きかけて消してはいけない理由
線香は火をつけすぎると、まるでロウソクのように燃え上がります。やけどが怖くなり、つい息で吹き消してしまうかもしれませんが、失礼にあたるため控えましょう。
線香を息で吹き消してはいけない理由として、仏教の教えである「汚れた人間の息を仏様に吹きかけるのは失礼」という説があると言われているためです。燃え上がる線香の火を消す場合は、以下の方法で行いましょう。
・線香を上下に揺らして火を消す
・線香を手の平で仰いで消す
・線香消しで消す
6. 線香を使う時のマナーを確認!気兼ねなくお墓参りを行えるようにしましょう
お墓参りは、めったに行くものではないという人もいるでしょう。いざ、お墓参りで線香をあげようとしても正しい手順や必要本数やマナーなどに困ってしまいがちです。
特に、お墓参りは地域性も関係することもあるため、事前にお墓の宗派を確認したり、菩提寺に問い合わせたりするなどして、事前に準備をすると安心です。
線香は、故人と会話するためのきっかけであるだけでなく、食事でもあり、同時に仏様にお供えするものですので、大切に扱いましょう。