未来のお墓研究所
お墓のさまざまな種類について解説。新しい形態のお墓も紹介
目次
経営形態で見たお墓の種類
墓地の分類方法で一般的なものとして、経営形態の違いが挙げられます。大きく分けて、「公営墓地」「民間墓地」「寺院墓地」「みなし墓地(共同墓地)」といったものがあり、多くの方のお墓はこのいずれかに該当するはずです。
公営墓地
公営墓地は地方公共団体が運営している墓地を指します。運営主体が地方自治体であるものと、公認の指定管理業者に委託しているものがありますが、その両者に利便性やサービス面で大きな違いはありません。
公営墓地は、寺院墓地や民間墓地と比べ、永代使用料や管理料が安い傾向にあります。一方で、使用に制限があることも多く、基本的にはその地域に住んでいる方しか利用できません。また、公営墓地は生前の墓地購入を制限しているところもあります。直近で身内を亡くし、墓地をすぐに必要とする方向けであるといえるでしょう。
よく共同墓地が公営墓地に属すると勘違いされますが、公営墓地は共同墓地とは異なるので注意しましょう。
寺院墓地
寺院墓地は仏教寺院が運営・管理するタイプのものを指します。多くは寺院の境内、もしくは寺院の隣接地に開設されています。基本的に檀家や門徒、信徒のためにある墓地と考えるとよいでしょう。
葬儀や法要など、供養に関することをすべて執り行ってくれるだけでなく、いつでも相談できるのも寺院墓地の大きなメリットです。
民間墓地
民間墓地は宗教法人や公益法人から委託を受けた民間企業が運営するものを指します。経営母体は宗教法人や公益法人であり、運営管理する会社は異なることもあります。
厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について」という通達によると、民間企業には墓地経営は基本的に許されていません。そのため宗教法人が経営母体になり、民間企業が運営管理を行うのが一般的です。どこまでを民間企業が担っているかは、経営母体である宗教法人の考え方によって異なります。民間霊園は誰でも利用でき、時代に合わせたきめ細かいサービスが充実しているのが特徴です。
みなし墓地
みなし墓地は、「墓地、埋葬等に関する法律 (墓埋法)」以前に開設され、追認されたものを指します。昭和23年に施行された墓埋法により、墓地や納骨堂の経営者は都道府県知事の許可が必要になりました。
しかし、この法律施行以前の墓地は管理者の存在が曖昧であることも多く、知事の許可を取る手続きを行うことができません。そこで、こうした墓埋法以前から存在する墓地については追認という形で対処したのです。
みなし墓地は使用に関して法律上問題になることはありません。しかし、管理者が分からないことも多く、改葬などの手続きが難しくなるリスクもあります。
埋葬単位で見たお墓の種類
お墓の種類は、埋葬される人・単位ごとに分類されることもあります。おもに「家墓(累代墓)」「両家墓」「個人墓」「夫婦墓」「共同墓」の5つに分けられます。
家墓/累代墓
家墓(いえはか)は一族で所有しているお墓を指し、累代墓(るいだいぼ)とも呼ばれます。「○○家の墓」といった家名が刻んであり、家族や親族が共同で使用します。
もっとも一般的なお墓とされ、長男が引き継ぐのが主流です。しかし、昨今の少子高齢化を受け、承継者がおらず維持管理が難しくなるケースが多いようです。そのため、墓じまいをし、別の墓地や樹木葬などの永代供養墓への移転や散骨を検討する方も増えています。
両家墓
両家墓は夫婦両家で所有するお墓のことです。ひとつの区画に両家のお墓を建てるか、両家の墓石をひとつにまとめて管理するか、そのいずれかが一般的です。近年では、一人っ子同士の結婚やお墓を継ぐ長男がいないといった事情から両家墓にする方も多いです。
個人墓
個人墓は故人ひとりだけで入るお墓です。永代供養もセットになっていることが多く、承継者を必要としないメリットがあります。「親類縁者に手間をかけさせたくない」と選択する方も多く、近年、特に注目を集めているお墓といえるでしょう。
また、自分専用のお墓になるため、デザインを自分流にあしらったり、自分の好きな文字を刻んだりと、遊び心を盛り込むことができるのも個人墓の大きな特徴です。似た形式のお墓として自宅墓がありますが、個人墓はあくまで墓地に故人専用のお墓を建てるものです。自宅で供養を行う自宅墓とは少し形式が異なります。
夫婦墓
夫婦墓は、夫と妻の2人だけで入れるものをいい、「めおとばか」「ふうふばか」と呼ばれます。子どもがいない夫婦や、先祖代々のお墓とは別にしたい、お墓の継承を望まない場合などに、夫婦墓を選ぶケースが多いようです。一般的なお墓では墓石に「◯◯家の墓」と刻むことが大半ですが、夫婦墓では2人の戒名や俗名を並べるケースがよくあります。
共同墓
共同墓は、血縁とは関係なく複数の方を同じ場所に埋葬するお墓を指します。大きな供養塔を建て、その内部にたくさんの遺骨を納められるようになっています。お墓を管理する家族や親族がいない場合や、お墓に費用をかけたくない場合に選ばれるケースが多いようです。ほかの遺骨と一緒に埋葬されるため、あとから遺骨を取り出して移動させる、といったことができません。
新しい形態のお墓
ここ数年、お墓のあり方も多様化し、墓地の形態にも変化が表れています。ここでは、新たなニーズに応えるようにして生まれた4つの供養の形をご紹介します。
樹木葬
樹木葬は墓石の代わりに桜や紅葉などのシンボルツリーを植えて故人の供養を行います。従来の墓地に比べて、明るく華やかなイメージのある樹木葬は「自然へのロマン」を大切にする方以外にも受け入れられて一気に流行しました。
樹木葬の種類として、里山に埋葬するものや墓地区画に埋葬するものなどが一般的です。承継者を必要としない永代供養であることも多く、子どもや親類に手間をかけさせたくないという人にも人気の供養方法です。
納骨堂
納骨堂は故人の遺骨を埋葬するのではなく、収蔵して供養するところです。いわゆる収蔵施設のひとつで、もともとはお墓を建てるまでの間、一時的に保管する場所でした。近年では納骨堂を使い続ける方も増え、それに伴い、納骨専用のサービスも登場しました。そのため一時保管だけでなく、永代供養をしてくれる納骨堂も多いです。
墓地に比べると広い場所を必要としないため、都心部のビル内にあってアクセス至便なところが大きな特長です。また、ビルの中で空調が効いているため、夏や冬でも快適に過ごせます。こうした利点から納骨堂の人気が高まっています。
自宅墓
自宅墓はその名の通り、自宅に置くことのできるお墓を指します。お部屋や仏壇の中に遺骨を安置することもでき、より身近に故人を供養できます。リビング、寝室といったお部屋にも置けるため、それぞれのライフスタイルに合わせやすいのも自宅墓のメリットのひとつです。
「家から墓地までの距離が遠い」という心配事がないので、残された家族の利便性を重視して自宅墓を選ぶ人も多くいます。
散骨
散骨は、遺骨を粉砕して山や海などの自然にまく方法で、海洋葬、山葬、宇宙葬などがあります。近年よく聞くようになった言葉なので新しい葬送の仕方と思われがちですが、実は、土葬や、風葬、鳥葬といったものは古くから行われてきました。
散骨のメリットは継承者が必要ない点と、一般のお墓に比べて費用が少なくてすむ点です。また宗旨・宗派を問いませんので誰でも実施できます。
埋蔵施設と収蔵施設
施設タイプによっても墓地の違いがあり、「埋蔵施設」と「収蔵施設」に分けることができます。
埋蔵施設
一般的な墓地は埋蔵施設ともいわれます。いわゆる墓地と聞いてイメージするものは埋蔵施設の一種であり、「一般埋蔵施設(一般墓地)」と表記されることもあります。ここ数年の間に、芝生を敷き詰めた芝生型埋蔵施設(芝墓地)や壁型埋蔵施設(壁墓地)、そして樹木葬を行う樹木型埋葬施設(樹木葬)などが登場しています。
収蔵施設
収蔵施設は、一般的には納骨堂といわれる、お墓を建てるまでの間、一時的に保管する場所でした。しかし、長期的に保管してもらいたい、という大勢のニーズを受け「長期収蔵を前提とした施設」も登場しています。
基本的には、収蔵施設は一時保管を前提としているため永代供養はできませんが、最近では一時保管後、無料で永代供養墓に改葬し、永代供養してくれる施設も登場しています。なお、最近テレビCMや折込チラシなどで目にする屋内型の墓地はこの収蔵施設に該当します。
神道のお墓の種類とは
神道と仏教とで、実はお墓に大きな違いはありません。というのも、お墓を建てる行為は宗教の教えから始まったことではなく、日本の風俗習慣に由来しているものだからです。
神道と仏教のお墓の違いのひとつは、お墓に刻む文字です。仏教ではお墓に「◯◯家の墓」と刻むのが一般的ですが、神道では神道式のお墓を表す言葉として「◯◯家奥津城」「◯◯家奥郡城」と刻まれるのが一般的です。
多様化するお墓の種類。ご希望に沿ったお墓を選びましょう
経営形態だけでなく、墓地・お墓の種類はさまざまな切り口で分類することができます。樹木葬や自宅墓といった新しい供養の形を選択する方も多い近年では、従来のお墓のイメージにとらわれるのではなく、あなた自身や家族がどうしたいかを中心に考えることが大切です。今回の記事を参考に、ぜひあなただけの理想の墓地・お墓を探してみてください。