未来のお墓研究所
更新日:2025.02.20
樹木葬
お墓
樹木葬で後悔しないために。購入前に確認すべきポイントを専門家が解説
目次
1. 樹木葬とは
「葬」とつくのでお葬式の形と勘違いされる方もいらっしゃいますが、字の如く「樹木」に葬送する供養の方法です。
お墓にお骨を納める方法については、しっかりと法律がありますので、「この山のシンボルである山桜の下にお骨を埋めてほしい」と希望してもそれは叶いません。寺院や霊園の中にある「ここは樹木葬で納めて良い」とされているところに供養します。
樹木葬にも様々なものがありますので、自分の意思や家族の形、将来を見据えてしっかり考えることが大切です。そこで樹木葬のポイントをおさえておきましょう
2. 樹木葬の種類
樹木葬のイメージといえば、「木の下に砕いたお骨をまく」ではないでしょうか。それも一つの形ですが、数えきれない種類があります。
ケース1 小さな墓石があるタイプ
樹木をシンボルにして、その周りの地面に小さな墓石のあるタイプです。単に、土にまくのではなく、お墓参りを考えた時、どこに自分の家族が眠っているのかはっきりしたいという需要も多いでしょう。
そこでできたのが、今までの竿石のしっかりしたお墓ではなく、20センチ角や直径15センチ程度の小さな石を家の区画とし、樹木を中心に展開しているものです。
この場合、ずっとここに入っていられるものもあれば、期限付き、例えば入ってから13年したら合祀(ほかの方と一緒に祀るお墓)するものもあります。形が同じでもルールが違うところも多々あります。
ケース2 骨壷ごと入るタイプ
シンボルとなる木の下に、骨壷ごと入るタイプもあります。樹木葬はお骨を砕いて納めるものが主流ですが、骨壷ごと土に埋葬する、あるいはお骨袋に入れ替えて、お骨を砕くことなく納めるものもあります
ケース1と同じく、ずっとそこに入れるところもあれば、期限が来たらほかに移すこともあります。
中には、地面ではなく、花壇のような高さのあるところに木を植え付け、その周りに納めるなど樹木葬も多種多様です。
3. 樹木葬の購入に向いている人とは?
樹木葬を選ぶ理由には、「自然に還りたい」「自然が好き」「家族に手間が掛からない気がする」「自分の後、お墓を守ってくれる人に不安がある」「お墓を守る人がいない」などが挙げられます。そうなると、その理由を「満たすもの」という目線で考えることが重要です。
例えば、期限付きの樹木葬で、のちに合祀になるものでしたら、継承者がいなくても安心なので、いわゆる「おひとりさま」は良いかもしれません。また、家族がなかなかお墓参りに来られない方も、寺院や霊園がしっかり管理してくれるものでしたら安心です。
また、自然に還りたい方なら、骨壷から出すものでないと叶いません。比較的安価であることから、費用面で心配だという方にも向いている傾向にあります。しかし購入時には「確認」が必要です。
4. 樹木葬で後悔しないために確認すること
お墓選び、この場合は樹木葬にするか否かを判断するためにも、以下のことを確認してください。
人生の“まさか”も考えて、お墓に納める方法を選ぶ
お墓は生きている時の延長線上にある、いわば「あの世での家」。家族の形が変われば、当然、お墓に納める方法も変わるということです。
例えば、結婚する様子がない40代の息子しかいないから、後が心配で樹木葬にすると決めた直後、「彼女が妊娠したから結婚する」との報告。もちろん嬉しいことですが、「まさか」と思ってしまうのは当然です。このように人生にはいくつものまさかがありますよね。
そこで、前項からお話ししている通り、骨壷のままお墓に納めて、いざという時には別の選択もできるのか、それとも一度お墓に納めたら改葬はできないのか、という確認は大事です。
将来の「ことの顛末」を見据えて決める
ほかのお墓でも同じことが言えますが、骨壷ごと入る形のもので、例えば13年経ったら合祀するルールの場合。移す時に家族がいないといけないのか?霊園などの管理者が移してくれるのか?という問題があります。前者は、将来お墓を継承してくれる家族が必要ですが、後者は継承者の有無は問いません。
家族が継承する予定のはずが、万一、継ぐ家族がいなくなってしまった場合はどうなるのか、という問題もあります。お墓は今だけでなく、将来の「ことの顛末」も見据えて決めましょう。
5.管理費の有無を確認する
管理費とは、清掃費用や樹木を育てる費用、管理してくれる方の人件費などです。
樹木葬では毎年の費用は掛からないと思われている方が多いです。掛からないところもありますが、年に数千円の管理費が発生するところもあります。毎年支払うところもあれば、購入時に一括で収められるところもあるので確認してください。
年に数千円の費用で管理を任せられるのであれば、家族としてもおひとりの方でも、大きな安心材料ではないでしょうか。
ほかにも確認したいポイント
・施設の利用のしやすさ
施設を選ぶ時は、必ず管理事務所からお参りするところまで歩いてみましょう。お墓参りしやすいか、年齢を重ねても寺院や霊園内は歩きやすいかどうかを確認してください。
・納骨以外のサービスの有無
お葬式の実施や手配、仏壇の相談ができるかなど、葬送に関するほかのことも依頼できるかを確認しておくと一層安心です。
6. お墓は収納場所ではない——遺された人の想いと供養のかたち
今回は樹木葬のことでしたが、近年ではお骨の収納場所は納骨堂や樹木の周りだけでなく、海ということもあります。自分がお墓に入る時はこの世にいませんので、自分が勝手に決めるのではなく、お墓を守ってくれる人と決めることが一番大切です。それはおひとりの方でも同じで、核家族化の日本においては、守ってくれる人が家族とは限らないからです。
お墓を守りきれないと考えていた姉妹がいました。縁はあってもあまり馴染みのない叔母が守っている墓をどうするか、10年間迷っていたそうです。手続きとしては難しくないのですが、叔母が大事にしている墓を安易にしまって良いのか?という気持ちの問題です。
お墓は単なる収納場所でない、私たち遺されたものにとって目に見えない大切な場ではないでしょうか。条件だけでなく、そのようなところもぜひ大切に決めてほしいと思います。

武藤 頼胡
むとうよりこ
一般社団法人終活カウンセラー協会 代表理事
主な著書に「こじらせない死に支度」(主婦と生活社)など。