未来のお墓研究所
更新日:2024.04.04
お墓
墓じまい
墓じまいでよくある後悔とは?後悔しないための3つのポイントを紹介
目次
「墓じまい」と「改葬」の違いとは
近年は「墓じまい」という言葉をよく耳にするようになりましたが、同時に「改葬」という言葉を耳にする機会も増えました。墓じまいと改葬の違いがよく分からないという方もいるかもしれません。
墓じまいとは、お墓を撤去し更地にした土地を管理者に返還することです。一方、改葬とは、所定の手続きを踏んで、埋葬されている遺骨を別の場所や別の形態のお墓に移動させることです。移動先によく選ばれているお墓には、永代供養墓や納骨堂・合祀墓などがあります。
墓じまいには必ず改葬を伴うことから、遺骨を新しい納骨先に改葬するまでの一連を墓じまいと考えるとよいでしょう。
墓じまいでよくある後悔
誰もが納得のいく墓じまいをしたいものですが、後悔するケースも起こっています。ここでは、墓じまいでよくある後悔を大きく3つに分けて紹介します。
お墓に関する後悔
・墓石がイメージと違った
墓石を選ぶ際、実物を見ずに価格だけで決めたりカタログやネットの印象だけで決めたりした結果、自分の希望していたお墓にならなかったというケースがあります。デザインや大きさが思っていたものと違い、自分のお墓が周りから浮いてしまうこともあるようです。
・樹木葬が人工芝だった
樹木葬を購入したものの、実際に見てみると人工芝の下に納骨室がある作りだったという後悔もあります。
樹木葬は草木の下に埋葬できる自然葬です。いきいきとした草木に囲まれた墓地を希望する方も多いでしょう。自然に囲まれていると思っていたものが人工芝では自然葬とは言い難く、本来の希望にそぐわない結果となってしまうのです。
・納骨堂が塩ビ管だった
外装や草木の美しい樹木葬を購入したものの、地下の納骨室(カロート)が水道工事などに使われる塩ビ管(塩化ビニル)だったというケースもあります。納骨室は遺骨を納める大切な場所であるため、見えなくても粗雑なものは使われたくなかったと後悔するようです。
・手入れが行き届いていない
写真ではきれいな霊園だったはずが、実際には草木の手入れがされておらず、清掃も行き届いていなかったというケースも起こっています。手入れが行き届いていないと、故人に対する敬意が欠けているようにも映り、不快に感じてしまいます。
・合祀されてしまった
遺骨は個別に保管されると聞いていたはずが、合祀されたというケースもあります。いつまで個別保管されるのか、期間を具体的に確認しなかった後悔が残っているようです。
・お墓参りに制限がある
気軽にお墓参りができると思って納骨堂にしたものの、個人のスペースが狭く落ち着いたお参りができないということもあります。納骨堂や霊園のルールによりお花やお線香を供えられない、共同の参拝スペースが盆や彼岸に混雑してしまう、といったケースがあるようです。
立地に関する後悔
・アクセスが悪い
お墓までの距離はそれほど遠くなくても、公共交通機関でのアクセスが悪いケースがあります。高齢になり自動車の運転が難しくなると、アクセスの悪さは後悔するポイントとして際立ちます。
駐車場はあるものの駐車可能台数が少なく、近隣のコインパーキングなども利用しづらいといったケースもあるようです。
・立地が悪い
土砂崩れでお墓が流された、地震でお墓が倒れた、豪雨でお墓が流されたなど、自然災害で影響を受けやすい立地のお墓を購入してしまい、後悔するケースもあります。
・水捌け、日当たりが悪い
水捌けが悪く納骨室(カロート)が浸水した、日当たりが悪くカビが発生した、というトラブルもあります。お墓の状態が悪いと故人に対し罪悪感を抱き、別の場所を選べばよかったと後悔するケースもあるようです。
費用に関する後悔
・石材店とのトラブル
寺院によってはお墓の工事を行う石材店が指定されており、指定石材店からの見積もりが予想以上に高かったというトラブルがよくあります。
指定石材店はなく、知り合いから石材店を紹介されたケースでは、遠慮して値段交渉ができず後悔するケースも見受けられます。通常は大幅な値引きや即決を迫ることはないにも関わらず、「今なら安い」と言われ即決して後悔してしまうケースもあるようです。
・想定外に費用がかかった
永代使用料が安いため契約したものの、毎年の管理料が高く想定外に費用がかかったというケースがあります。一年目の管理料は安かったが、二年目以降は高くなったという声も。
また、建墓費用や永代使用料、管理料までは想定していたものの、お線香代やお花代、卒塔婆代や法要代などを想定しておらず、後悔する人もいるようです。
墓じまいした際、想定外に多くのご先祖様の遺骨が出てきたというケースも。改葬先のお墓の費用が遺骨の数によって変わる場合、予算オーバーになることもあります。
関係者とのトラブル
・寺院、菩提寺とのトラブル
墓じまいをするということは、その寺院の檀家をやめることになります。檀家制度は、先祖代々のお墓を供養してもらう代わりに檀家料を払う仕組みで、寺院にとっては檀家がなくなることは大きな痛手です。
そのため、墓じまいをして檀家をやめる際には離檀料をお支払いするのが習わしですが、その金額が予想以上に高額だったというトラブルがあります。離檀料の相場は寺院や地域によっても異なりますが、一般的には3~20万円程度と言われています。
寺院とトラブルになると、場合によっては遺骨を渡してもらえないこともあるようです。
・家族、親族とのトラブル
お墓には先祖代々の遺骨が納められており、自分たちが納得したからといって簡単に墓じまいできるわけではありません。
家族・親族とのトラブルでよくあるのは、墓じまいを反対されることです。反対される主な理由には次のようなものがあります。
・お墓がなくなるのは嫌、お墓参りができなくなる
・ご先祖様に申し訳ない
・お墓を撤去すると祟られる
・本家や長男が後を継ぐのは当たり前
改装費用を誰が出すのかで揉める、お墓の名義人である親が施設に入ってしまい名義を変更できない、といったトラブルもあるようです。
墓じまいで後悔しないための3つのポイント
墓じまいでは、確認不足や話し合い不足によってさまざまな後悔が残ります。後悔しないためのポイントを確認しておきましょう。
必ず現地調査を行う
・立地に関して見ておくべきポイント
まず、自治体のハザードマップを見て、墓地周辺が土砂災害の恐れのある区域に指定されていないかを確認しましょう。お墓には「建築基準法」のような法律はありませんが、経営主体によってはしっかりと耐震基礎工事を行っているところもあります。それらを踏まえて霊園を探すのも大事なポイントです。
公共交通機関でのアクセス方法や、駐車台数、近隣のコインパーキングの有無も忘れず確認します。現在のことだけでなく、混雑時や自動車の運転が難しくなった場合のことも想定して判断しましょう。
・お墓に関して見ておくべきポイント
まず、それぞれの霊園によってルールが決められている場合が多いため、火気やお線香の使用制限などを確認し、自分のしたいお参りができるお墓を探すことが重要です。また、個人の使用スペース、盆や彼岸の混雑状況まで調べておくと安心でしょう。
建墓の際は、墓地の環境や周囲との調和を図ることが大切です。石材によって経年変化が異なるため、周囲の環境や石材の特徴を知って、実物を見て選びましょう。
樹木葬の場合
人工芝ではないか、納骨室が塩ビ管でないかを現地調査で確認しましょう。また、草木が伸び放題ではないか、売店や休憩所・トイレや水場などがメンテナンスされているか、管理スタッフは常駐しているかを確認することで、運営姿勢や経営状況をうかがうことができます。
遺骨を安置するカロートには、「地下カロート」と「丘カロート」があります。地下に遺骨を収める「地下カロート」は通気性が悪く湿度が高くなりがちな一方、地面より上に納骨室がある「丘カロート」は通気性に優れています。通気性の良さを重視するなら、丘カロートを採用している霊園から選ぶのがおすすめです。雨の日にどこに水が溜まるのかを見学して、区画を決めるのも良いでしょう。
自然たっぷりの大きな木の下の区画は魅力的ですが、日当たりの悪さや虫・落ち葉の多さが気になる方もいるようです。季節によって状況は変わるため、一年を通してイメージするとより具体的な環境選びができるでしょう。
必ず現地調査を行う
墓じまい
お墓の解体工事の費用相場は、8~10万円/㎡程度と言われています。しかし、お墓の環境によっては機材が入らず、時間や人手が増えることも考慮しなければいけません。寺院によって石材店が指定されている場合でも、見積金額が相場とかけ離れているなら内容についてしっかりと説明してもらい、納得できない場合は他の業者に見積もりを取らせてほしい旨を寺院に相談しましょう。
石材店選びでは、信頼できる業者であることも重要です。過去には、悪質な業者が撤去した墓石を不法投棄していたケースがあります。口コミなどを利用して、信頼できる業者かどうかも確認しましょう。
改葬
「よく分からないまま購入して失敗した」「業者に任せすぎて失敗した」とならないようどんどん質問し、要望を伝えて進めることがポイントです。石材店を選ぶ際には相見積もりを取ることをおすすめします。複数の見積もりを比較し、内訳や施工内容について細かく質問しながら進めることで、後々のトラブルを防げるからです。
メインの費用だけでAとBを比較してAの方が安い場合でも、トータルではBの方が安いということもあります。霊園の管理費は、二年目から高くなるケースもあるので注意が必要です。内訳や数年後までのトータル費用も事前に確認しましょう。
関係者と事前に話し合う
墓じまいを決める前に関係者と話し合いましょう。決めてからの報告では、反発も大きくなります。墓じまいを検討している段階で関係者に伝え、相談しながら進めることでトラブルは軽減します。
家族・親族とのトラブルを避けるためには、複数の改葬先を提案したり、見積もりを見せて費用の説明をしたりするとよいでしょう。決定事項を伝えるのではなく、家族や親族にも墓じまいに参加してもらうことでスムーズに進めやすくなります。
檀家をやめる際には、先祖代々お世話になったお寺に感謝の気持ちを持ち、直接会ってていねいに事情を説明し、これまでのお礼を伝えることが大切です。
関係者と事前に話し合うには、時間に余裕がなければいけません。独断で進めてトラブルにならないよう、墓じまいは元気なうちに余裕をもって行いましょう。
墓じまいのトラブルはどこに相談すべきか
墓じまいがトラブルに発展してしまった場合には、早めに第三者へ相談することが大切です。墓じまいの手続きで困った場合は、お墓のある自治体に相談しましょう。事例として多くはありませんが、自治体によっては墓じまいに対して補助金制度を設けていたり、墓じまいのサポートを行っていたりします。
また、国民生活センターや、地域の消費者センターに相談するのも一案です。国民生活センターのホームページでは、墓じまいの際のトラブル事例や助言なども紹介されています。
現地調査や話し合いをていねいに行い、後悔のない墓じまいを
考えるべき項目の多い墓じまい。焦って進めるとトラブルに繋がりかねませんので、スケジュールに余裕を持って進めましょう。協力者がいれば見落としも防げますので、家族・親族と相談しながら進めるのがおすすめです。必ず現地調査や打ち合わせをていねいに行い、一つひとつ着実に進めていきましょう。