未来のお墓研究所
【お墓の継承問題】よくあるトラブルと解決方法
目次
- お墓の継承とは
- お墓の継承よくあるトラブル①「祭祀承継者が決まらない」
- 「祭祀承継者が決まらない」場合の解決法
- お墓の継承よくあるトラブル②「祭祀承継者が幼くお墓を管理できない」
- 「祭祀承継者が幼くお墓を管理できない」場合の解決法
- お墓の継承よくあるトラブル③「霊園が血縁者以外の継承を認めていない」
- 「霊園が血縁者以外の継承を認めていない」場合の解決法
- お墓の継承よくあるトラブル④「お墓の相続が遺産分割に影響する」
- 「お墓の相続が遺産分割に影響する」場合の解決法
- 祭祀承継者になるメリット・デメリット
- 祭祀承継者になるメリット
- 祭祀承継者になるデメリット
- お墓の継承の手続き・流れ
- 生前の話し合いと遺言書がポイント。墓じまい・改葬も解決方法の1つ
お墓の継承とは
お墓や遺骨、仏壇などの祭祀財産の所有権を持ち、管理する人のことを「祭祀承継者」といいます。祭祀承継者が亡くなる、あるいは祭祀承継者が辞める場合、次の祭祀承継者となった方が「お墓を継承」することとなります。
その際、現在のお墓をそのまま継承することもあれば、祭祀承継者が管理しやすいように「墓じまい」して、新しいお墓に「改葬」することもあります。「墓じまい」とはお墓を解体・撤去することで、「改葬」とは現在のお墓から新しいお墓へ遺骨を移すことを指します。基本的には、「墓じまい」と「改葬」は一連で行われることになるので、ほぼ同義で使われることが多い言葉です。
お墓の継承よくあるトラブル①「祭祀承継者が決まらない」
お墓の継承でもっとも多いトラブルの1つが、「祭祀承継者が決まらない」ことです。祭祀承継者になりたい人が複数いてなかなか決まらない場合もありますが、なり手が決まらずにトラブルになるケースが多いと考えられます。
民法では、元の祭祀承継者から遺言等で指定された者が、次の祭祀承継者になるものと定めています。しかし、遺言等による指定がない場合、慣習や親族間の話し合いで決めることとなります。祭祀承継者にはお墓を維持管理していく義務が生じるため、負担に感じて「お墓を継ぎたくない」と考える人も少なくないのです。
「祭祀承継者が決まらない」場合の解決法
もっとも望ましいのは、元の祭祀承継者が生前のうちに、次の祭祀承継者を遺言等で指定しておくことです。遺言を遺す前に亡くなってしまった場合、祭祀承継者が決まるまで根気よく話し合いを続ける必要があります。お墓は長男・長女に限らず、長子以外や改姓した子ども、甥や姪、血縁者以外でも相続可能です。慣習に縛られず、幅広い関係者の中から祭祀承継者探してみるとよいでしょう。
祭祀承継者が決まらない主な要因には、お墓が遠方にあって維持管理の負担が大きいことが考えられます。どうしても祭祀承継者のなり手が見つからない場合、近隣の霊園に改葬するか、管理のいらない永代供養墓に改葬することも検討しましょう。
お墓の継承よくあるトラブル②「祭祀承継者が幼くお墓を管理できない」
元の祭祀承継者が早くに亡くなった場合など、次の祭祀承継者になるべき人がまだ未成年ということがあります。祭祀承継者に年齢制限はありませんが、お墓の維持管理や法要の主宰などを未成年者に任せることは現実的ではありません。このケースに当てはまった場合は、親族間で話し合って対応方法を決める必要があります。
「祭祀承継者が幼くお墓を管理できない」場合の解決法
解決法には、次の2つが考えられます。1つは、祭祀承継予定者が務めを果たせる年齢になるまで、代わりの者が祭祀承継者となる方法。もう1つは、未成年者を祭祀承継者とするものの、実務は未成年後見人が行う方法です。どちらの方法も、祭祀承継の役割を果たす人物を新たに決める必要がありますので、親族間でしっかり話し合いましょう。
お墓の継承よくあるトラブル③「霊園が血縁者以外の継承を認めていない」
民法上、祭祀承継者となる人について、血縁の有無などの制限は設けられていません。しかし、霊園や寺院によっては、血縁者以外はお墓を引き継げない規定を設けている場合があります。また、規定の厳しいところでは、お墓の継承者を直系長男に限定している場合もあります。いざお墓を引き継ぐ段になって初めて霊園の規定を知り、「規定に則った祭祀承継者がいなくて困る」事態になることもあるのです。
「霊園が血縁者以外の継承を認めていない」場合の解決法
まず、後々のトラブルを回避するために、予め霊園や寺院の規定を確認しておくことが基本です。また、近年の社会背景を鑑み、霊園側が規定を緩和してくれることも考えられます。霊園の規定に則っていない人物であっても、親族間で適任と判断した祭祀承継者がいる場合は、霊園側に相談してみるとよいでしょう。どうしても霊園の規定と折り合いがつかない場合は、別の霊園等への改葬を検討することとなります。
お墓の継承よくあるトラブル④「お墓の相続が遺産分割に影響する」
お墓や仏壇などの祭祀財産は、相続税の掛からない遺産の1つです。家や貯蓄などの相続財産とは別物のため、遺産分割を計算するうえで祭祀承継を加味するルールはありません。しかし、祭祀承継者が責務の負担を加味した遺産分割を要求することで、お墓の相続のみならず遺産分割トラブルにまで発展するケースがあります。
「お墓の相続が遺産分割に影響する」の解決法
遺産問題にまで発展すると、話し合いで解決するのは容易ではありません。もっとも望ましいのは、遺言書で祭祀承継者を指定した上で、相続財産の分け方も指定しておくことです。遺言書がない場合、早期の解決を図るために祭祀承継者に多めの遺産を分割することも考えられます。親族間の話し合いによる解決が難しい場合は、弁護士等の第三者に相談することも検討しましょう。
祭祀承継者になるメリット・デメリット
お墓を相続して祭祀承継者になると、どのようなメリット・デメリットがあるかを確認しましょう。
祭祀承継者になるメリット
お墓や遺骨・仏壇などの祭祀に関わるものを管理・決定する権利を持つことができます。よって、「今のお墓を墓じまいしたい」「永代供養墓に改葬したい」といったことも、基本的には祭祀承継者の判断で行うことができるのです。また、場合によっては、祭祀継承者の責務が考慮され、遺産分割で多めの遺産を受け取れることもあります。
祭祀承継者になるデメリット
定期的にお墓まいりに行ったり仏壇をメンテナンスしたり、といった祭祀財産の維持管理の負担が大きいと感じる方もいるでしょう。また、法要を主宰する務めもありますし、お墓が寺院墓地にある場合には、檀家の務めも発生します。さらには、霊園などに支払うお墓の管理費や寺院へのお布施など、金銭的な負担がかかる点もデメリットに挙げられます。
お墓の継承の手続き・流れ
祭祀承継者が決まったら、お墓を相続する手続きに進みます。まずは、墓地や霊園の管理者に連絡し、名義変更を行います。名義変更には墓地使用許可証や戸籍謄本などの書類が必要なほか、名義変更手数料もかかります。予め、霊園や寺院に名義変更の必要書類と手数料を確認しておきましょう。
生前の話し合いと遺言書がポイント。墓じまい・改葬も解決方法の1つ
お墓の継承のよくある4つのトラブルと解決法をご紹介しました。トラブルを回避する方法として望ましいのは、やはり遺言書等で意思を示しておくこと。そして、親族間の話し合いがポイントとなります。後々にトラブルを深刻化させないためにも、関係者が生前のうちにお墓の継承について話し合っておきましょう。また、お墓の継承問題を解決する方法の1つとして、墓じまい・改葬も考えられます。親族が納得できる方法をぜひ検討してください。