未来のお墓研究所
新しい供養のかたち ~おりん~
先日東京ビッグサイトで行われた第6回エンディング産業展では、最新の葬儀・埋葬・供養に関する様々な商品が紹介されました。その中で特に目を引いたのは、これまでの仏壇や仏具のイメージを一新させる、とてもきれいでコンパクトなものたちです。まるで雑貨屋さんにあってもおかしくないデザインで、種類も豊富な仏具たち。今回はそんな仏具の中から「おりん」についてご紹介いたします。
1. おりんとは
おりんというと皆さんもきっと鳴らしたこととのある、仏前で手を合わせる際「チーンとならすもの」のことです。
すぐにイメージできるのは、小さな座布団の上に乗ったお椀のような形をした金属製のものではないでしょうか?
実は「おりん(リン)」はお椀の形をした鈴の部分だけを言い、通常はリン棒やリン布団、リン台、リン棒台などとセットで使用するものです。
おりんはもともと禅宗で使われていたもので、今ではすべての宗派で使用われています 。おりんには、鳴らすことによって人々の邪念を払うことができ、この音に乗せて供養や祈りを極楽浄土に届けるといった意味があるようです。
2. おりんの鳴らし方
おりんの鳴らし方にはマナーがあります。基本的におりんは教本を読む際に使用するもので、一定の区切りをつけたり、音程とリズム合わせるために鳴らします。おりんを鳴らす場回数は宗派によって異なります。
普段私たちが鳴らす場合は、「お参りに来ました」「お供えをします」というように、手を合わせる前におりんを鳴らします。回数は特に決められてはいませんが、手を合わせる前に1~3回を目安に鳴らすといいでしょう。お線香をあげる場合は、宗派によってはおりんを鳴らさない場合があります。
実は私も知らなかったのですが、おりんを鳴らす場合、みなさんはどこを打っていましたか?おりんの正しい鳴らし方は、おりんの横から縁に沿ってリン棒を使って打ちます。上から打っても音は鳴りますが、聞き分けてみると音が違って聞こえます。宗派によっては内側を叩く場合もあります。
後述しますが、今回の展示会ではこの上から叩く人も多いことから作られた商品も出展されていました。
3. おりんの音のリラックス効果
音声・音響を専門にする分析機関、日本音響研究所が行った分析によると、“おりん”の音色に癒しの効果があるとされる“1/fのゆらぎ”があると公表されています。
1/fのゆらぎとは、波の音や小川のせせらぎの音、木の葉のそよぎ、虫の声など、一般的に人間が“ここち良い音”と感じる音に共通する周波数と振幅の特性を科学的に分析した指標で、この定義に適った音を聞くと、脳波中のα波が増加し、リラックスする傾向が科学的に確認されています。
ですから、自分の気に入った音を見つけて、故人の供養をするとともに、自分自身の癒しとして使用するといいでしょう。
4. 美しい音色と斬新なデザインの九乗おりん
「久乗おりん」は、伝統工芸高岡銅器の街で明治40年に創業した「山口久乗」により作られたおりんのシリーズです。
高岡市は約400年も前より鉄鋳物の生活用品や銅器づくりが盛んで、国の伝統工芸品として、いまでは全国のトップシェアを誇る町です。
九乗おりんの音色は1/fのゆらぎの定義に適って音であると日本音響研究所の分析結果も出ています。
この展示会で感じたことは、仏壇や仏具の新商品はどれも「女性目線」が生かされているという事でした。
子供の頃よく目にした仏壇や仏具は何か「怖い」イメージがありましたが、今やインテリアに合う雑貨のような楽しさがあるものがいくつも生まれています。こうした企業の努力が、伝統や故人への想いをつないでいるのだと感じました。