未来のお墓研究所
無縁仏とは?無縁仏になる理由と、生前にやっておきたい対策を紹介
目次
無縁仏とは
無縁仏とは、身寄りのないまま亡くなったり、お墓を管理する家族や親族がいなくなったりした遺骨のことを指します。昔は家族や親戚が近くに住み、互いに支え合い、強い繋がりがありました。しかし、現在は少子高齢化や核家族化が進んでおり、特に都市部では無縁仏の問題が顕著となっています。
総務省が令和5年3月に行った調査で、誰にも引き取られない無縁遺骨が約6万柱もあることが明らかになりました。この調査では、無縁遺骨の全体数を完全に把握しているわけではないため、実際にはもっと多くの無縁遺骨があると考えられます。
次のように、平成30年3月末から令和3年10月末までの約3年半で、無縁遺骨の保管数は30%以上も増加しています。
【引取者のない死亡人の遺骨の保管状況】
平成30年3月31日 | 令和3年3月31日 | 平成30年3月31日 | |
---|---|---|---|
保管柱数 | 45,478 | 56,745 | 59,848 |
無縁遺骨を保管している市区町村の数 | 641 | 794 | 822 |
遺留金等に関する実態調査結果報告書(令和5年3月/総務省行政評価局)『基礎調査における引取者のない死亡人の遺骨の保管状況』より一部抜粋
無縁仏になってしまう理由
無縁仏になってしまう理由は、社会からの孤立だけではありません。ここでは、無縁仏になってしまう理由を見ていきましょう。
孤独死(無縁死)
無縁仏になってしまう大きな理由のひとつに孤独死があります。孤独死とは、一人暮らしの人が自宅などで亡くなり、長期間(数日から数週間、場合によっては数ヶ月)誰にも気づかれない状態のことです。
東京23区内における一人暮らしで、65歳以上の人の自宅での死亡者数は次のように年々増加しています。
また、総務省統計局が公表した令和2年の国政調査では、孤独死の総数は6,727人となっており、その中でもっとも多い年齢層は60〜69歳で全体の29.1%を占めています。死因の中では病死がもっとも多く、66.8%に上ります。
さらに次のように、単独世帯および夫婦のみの世帯が全体の約6割に増加しており、これに伴い孤独死のリスクも高まっていることが指摘されています。
お墓の管理者がいなくなる
お墓の管理者や継承者がいなくなると、無縁仏の状態になります。日本では家の長男がお墓を継承する風習が根強いですが、家族構成の変化に伴い、この風習を維持するのが難しくなっています。
未婚で生涯を送る人や、子どもを持たない選択をする人も珍しくありません。こうしたことからお墓を継ぐ人がいなくなり、結果として無縁仏になるケースが増えています。
お墓の管理料が支払われない
お墓の維持にかかる管理料が支払われない場合、遺骨は最終的に無縁仏となり、お墓は撤去されます。管理料の未払いが長期にわたると、管理者は官報への掲載や墓地内への立て札設置によって関係者に連絡を取ろうと試みます。しかし、一年間表示しても関係者から申し出がなければ、法律に基づき管理者は遺骨を無縁仏として改葬することになるのです。
新しいお墓を購入する際には、主に2つの費用がかかります。1つは墓石の費用、もう1つはお墓を建てるための土地、すなわち墓地の使用権に対する費用です。墓地は土地そのものを購入するのではなく、その使用権(永代使用権)を購入しています。
墓地は、お寺や霊園などの管理者が所有しているものであり、購入者はその管理者から土地の使用権を得て、自分の墓石を設置している状態です。したがって、管理費の滞納がある場合、管理者はその土地の使用権を取り消し、土地を回収する権利を持っているのです。
霊園や寺院の廃業
霊園や寺院が廃業してしまうことがあります。その際、通常は施設側がお墓の継承者に連絡をとり改葬を進めるため、無縁仏になることはありません。ただし、お墓の継承者に連絡を試みても応答が得られない・継承者が見当たらないといった場合、無縁仏となってしまいます。
無縁仏になると共同墓地に合祀される
孤独死を迎えた場合でも、身元が分かり家族との連絡が可能なケースもあります。しかし、家族が「関わりたくない」「縁を切っている」といった理由で遺体の引き取りを拒否するケースが増えています。
このように、身元不明や引き取り拒否により無縁仏になる場合、地方自治体が遺体を引き取り、火葬した後、行政が管理する共同墓地に合祀されます。
お墓に納められていたが無縁仏となる場合は、お墓の管理料が支払われないケースと同様に、官報への掲載などによってお墓の継承者に連絡を試みます。しかし反応がなければ遺骨は取り出され、共同墓地に合祀されます。
共同墓地への合祀では、遺骨の一部のみを合祀するか、体積を減らすために細かく砕いた状態での合祀が行われることがあります。これは、無縁仏の数が増加している中で、合祀スペースの問題も出ているからです。合祀後に引き取り者からの連絡があったとしても、一度合祀されると遺骨を取り出すことはできません。
無縁仏にならないための対策
誰にも看取られず、供養されないことはその人の尊厳に関わる問題です。多くの人が孤独死を避けたいと願い、無縁仏にならないための対策を取りたいと考えるでしょう。ここでは、無縁仏にならないための具体的な対策をご紹介します。
孤独死を防ぐ
無縁仏にならないために、孤独死を防ぐことが大切です。そのための具体的な方法を6つ見ていきましょう。
・親族に気にかけてもらう
親族とこまめに連絡を取り、気にかけてもらうことを意識しましょう。今はスマートフォンのLINEアプリなどで簡単に連絡をとることができます。「毎日○時」など定期連絡のタイミングを決めておくとよいでしょう。
万一、定期連絡が途絶えた場合、親族から自分の近所の人に連絡を入れて様子を見に来てもらうなど、対処方法も決めておいてください。
・コミュニティに参加する
習い事や地域の集まりなどに参加し、身近な知り合いを作っておく方法も有効です。毎日散歩に出かけたり家の前を掃除したり、決まった時間に外に出る習慣を作るのもよいでしょう。
毎日ご近所と顔を合わせて挨拶することで、いざという時に「今日は○○さんいないな、おかしいな」と異変に気づいてもらいやすくなります。とにかく、自宅にこもり切りにならないことが重要です。
・自治体のサービスを利用する
孤独死の問題は社会全体の取り組みが求められており、全国の自治体が孤独死対策に力を入れています。
たとえば、世田谷区では高齢者向けコミュニティの充実・電話訪問による見守り・見守りを必要とする高齢者の把握など、より早く異変に気づくための取り組みが行われています。
自治体ごとに孤独死対策の取り組み内容は異なるため、お住まいの福祉科などに問い合わせましょう。
・民間の見守りサービスを利用する
状況や目的に合わせて、柔軟にサービスを利用したい場合は民間の見守りサービスもおすすめです。
セキュリティ会社などが提供する見守りサービスは、センサーやカメラを自宅に設置し、異常を感知するとセキュリティ会社が対応します。家族はカメラからの画像や音声を確認でき、24時間の見守りが可能です。
家電や電球などに見守り機能を搭載し、利用したタイミングで家族に通知が届くサービスや、食事の配達時に見守りの機能を果たす配食サービスなどもあります。
費用や手軽さ、見守りの程度などはサービスにより異なるため、生活状況や性格に合った方法を検討しましょう。
・孤独死対策アプリを利用する
スマートフォンのアプリを活用してみるのもよいでしょう。
孤独死対策に取り組むアプリは、有料・無料どちらもさまざまなサービスがリリースされています。アプリを登録するだけで、スマートフォンの利用状況から家族へ安否情報がメールで配信されるサービスや、スマートフォンを持ち歩くことで家族が高齢者の位置情報を確認できるなど、多様なサービスがあります。
高齢者でも扱いやすいよう、複雑な操作を必要としない仕様になっているのが特徴です。
・老人ホームに入居する
老人ホームなどの介護施設では、スタッフによる健康管理や安否確認が24時間行われるため、見守りという意味で最も安心です。家族以外と接触する機会が増えることや、イベントやレクリエーションなどの充実も魅力です。
老人ホームは、入居できる対象の方・費用・サービス内容など、タイプによってさまざまです。人気の施設は数年単位の入居待ちが発生することもあるので、希望の方は早めに情報収集することをおすすめします。
エンディングノートや遺言を残す
葬儀や供養に関する自分の意志を信頼できる人に伝えるために、エンディングノートや遺言を残しましょう。
エンディングノートを配布している自治体もありますが、市販のノートでも問題ありません。家族や友人の連絡先や葬儀の希望、生前契約したお墓がある場合はその情報も記しておきます。
エンディングノートに記載された内容は、法的な相続の効力がありません。そのため、相続に関する内容も残したい場合は、専門家と相談して遺言書を作成しましょう。
墓じまいをしておく
自分が亡くなった後、お墓を管理する人がいなくなる場合は、無縁仏になる前に墓じまいしておきましょう。
墓じまいとは、墓石を撤去し、更地にした墓所の使用権を管理者に返還することです。お墓に納められている遺骨を取り出し、新しい納骨先に改葬します。お墓の跡継ぎがいない場合の改葬では、霊園や寺院に永代にわたって供養してもらえる永代供養墓が人気です。
墓じまいをする際には、後々のトラブルを防ぐために、家族や親族に事前に相談し、同意を得ておく必要があります。
永代供養墓を生前契約しておく
近頃、身寄りのない方や子どものいない方、お墓の跡継ぎがいない方が生前に永代供養墓を申し込むケースが増えています。自分で永代供養墓を準備しておくことにより、自分の死後に無縁仏になるリスクや、お墓を継いだ人が墓じまいをする苦労を避けられるからです。
お墓の後継ぎが遠方にいる場合、お墓を継承した子や孫世代がいつまでも元気にお墓参りできるとは限りません。子や孫が年を重ねて遠方のお墓参りが難しくなると、お墓は管理されなくなってしまいます。お墓の後継ぎが遠方にいる方にとっても、無縁仏の対策として永代供養墓の生前契約は有効です。
無縁仏はお参りしてはいけない?
よく「無縁仏をお参りしてはいけない」「無縁仏に手を合わせてはいけない」といわれますが、ご先祖様のお墓と同様に手を合わせてお参りしても問題ありません。
「無縁仏お参りしてはいけない」とされたのは、「故人が寂しさから、お参りに来た人をあの世に連れて行く」という迷信に由来しています。お線香やお花などのお供物を準備し、通常のお墓と変わらない方法でお参りしましょう。
無縁仏にならないよう、生前準備をしておきましょう
孤独死やお墓の管理者不在などの問題により、無縁仏の数が増えています。親族と定期的に連絡を取る、自治体や民間のサービスを活用するなどして、孤独死対策を心がけましょう。葬儀や供養に関する自分の意志をエンディングノートなどで伝えることも大切です。
また、お墓の継承者がいない、遠方に住んでいるなどの理由で無縁仏になることへの不安がある場合、墓じまいを行い、生前に永代供養墓を契約しておくなどの対策を検討しましょう。