未来のお墓研究所
永代供養墓のメリットとデメリット
近年話題になっている“永代供養墓”は承継を前提としないお墓で、主に子供のいないご夫婦や単身者の方、もしくは「子供はいるけれどお墓の負担をかけたくない……」とお考えの方々から人気を集めています。管理料が不要で、檀家になる必要がない場合が多いという点も人気のポイントのひとつでしょう。“供養”と仏教用語の名が付いている通り、永代供養墓は元来寺院の施設でしたが、最近では民間の霊園でも永代供養墓またはそれに準ずる言葉を用いるようになり、そのお墓のかたちも多種多様です。
しかし、そんな魅力的に思える永代供養墓にも実はいくつかの注意点があります。知らずに申し込んだ結果後悔したり、親戚どうしでトラブルになったりするような事態は避けたいものです。そこで今回は、『永代供養墓のメリット(長所)とデメリット(短所)』についてご紹介いたします。
1. “永代供養墓”とは何か?
永代供養墓は、「お寺が続く限り供養してくださるお墓」という意味です。
(似た響きの“永代使用権”という言葉がありますが、こちらは「お墓の利用者が代々続く限りその土地を借りられる権利」という意味です。ややこしいですが、永代使用の“永代”は主体がお寺ではなく利用者であるという点で、永代供養の“永代”とは別物です。)
永代供養墓のかたちには様々な種類がありますが、以下のように区別できます。
・合葬墓
ご遺骨を骨壺から取り出し、血縁を越えてひとつのお墓に入るタイプです。“共同墓”や“合祀墓”とも呼ばれますが、最初から「みんな一緒」に埋葬されるのに抵抗があるのであれば、この形は避けたほうがよいでしょう。
・個人墓
個人もしくは夫婦単位で、専用の墓所に埋葬されるタイプです。十三回忌や三十三回忌など一定期間を経て、寺院や霊園などの管理者によって合葬墓に移され、引き続き供養されます。
・集合墓
個別に設けられた納骨スペースそれぞれに石碑や石塔が建てられ、それらを集合させてひとつの大きなお墓を作っているタイプです。お墓のマンションのような形態といえます。
2. 永代供養墓のメリット(長所)
永代供養墓のメリットをいくつかご紹介いたします。
・承継を前提としないお墓
「承継を前提としない」というと、先述のように子供がいない夫婦や単身者を想定されるケースが多いですが、子供が海外などに移住したり、違う宗教を信仰したりしているなどの理由で供養できない方々がご利用されることもあります。
・お寺が供養してくれる
「永代供養」とはお寺が続く限り供養してくれるという意味です。つまりお寺が合同法要などで定期的に供養してくれるので、自分が亡くなったあと無縁墓になる心配がなく安心です。
・檀家にならなくてもよい場合が多い
お寺にお墓を建てると檀家にならなければなりませんが、永代供養墓の場合は入壇しなくてもいいところが多くあります。檀家ではないので、お寺を護持するおつとめやお布施の必要は基本的にありません。
(※ただし、お寺によっては檀家でないとお葬式を執り行ってもらえないところもあるようですので、事前の確認が必要です!)
以上が永代供養墓の主なメリットです。総合すると、将来のお墓の心配をなくしたいもしくは子供にお墓の負担を残したくないとお考えで、お寺との関わりに積極的でない方なら、永代供養墓を選択肢のひとつとして考えてよいでしょう。
3. 永代供養墓のデメリット(短所)
このようにお墓にかかわる心配事が少なく、とても魅力的に思える永代供養墓ですが、親戚同士でトラブルになりかねない、以下のようなデメリットがあります。
・遺骨が返ってこない
合葬タイプの永代供養墓では、ご遺骨を骨壺から取り出してほかのご遺骨と一緒に埋葬するため、他の方のお骨と見分けがつかなくなります。つまり、身内が後になってからお寺に「遺骨を返してほしい」とお願いされても、お寺としては対応できず、トラブルになる場合があります。トラブルを避けるためには、事前に家族や親戚に相談しておくことが大切です。どのようなかたちで埋葬されるのかもしっかりと考え、伝えておくことが重要になります。
・生前購入が原則の施設がある
お寺によって対応は様々ですが、中には生前購入を原則とするところもあります。つまり事前に申し込んだ方しかお墓に入れない形式となり、そのようなところでは家族が遺骨を持っていても永代供養墓に埋葬できるとは限りませんので、注意が必要です。
・檀家でないとお葬式をあげてもらえない
これもお寺によって対応は異なりますが、お葬式の際にお経をあげてほしくても、檀家ではないのであげてもらえないことがあります。
以上が永代供養墓の主なデメリットです。総合すると、これらのトラブルを避けるためには“お墓について家族と事前に相談をしておくこと”、“購入を検討している永代供養墓について詳しく下調べしておくこと”の二点が重要になります。
人気の永代供養墓ですが、お墓に関わる不安を減らせるようなメリットもあれば、一歩間違えればトラブルの元となりかねないデメリットもあります。そのため、親族の方々とお墓について相談しておくことが大切になります。「どの範囲の親戚までお知らせすればいいの?」とお悩みの場合は、ご自身でわかる可能な限りの方々に声をかけたほうがよいでしょう。